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あおさんのブログ

こんにちは テアトル・エコーの青柳敦子です。「ぐるっぽ・ちょいす」というユニットで、舞台作品を作ります。ワークショップも開催します。人と人とのふれあいと、笑いを求めて今日も行く!! 一匹狼の演出家です。

   
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  • 2015/06/24 (Wed)
  • 「心と体の平和バトン」 2日目 by 青柳敦子

梅雨というより雨季のようなお天気ですね。
ご近所の幼稚園の園庭にあるねむの木が、今たくさんのふわふわな花をつけています。



さて、パフォーミングアーティストのオーハシヨースケさんからバトンをお預かりし、「心と体の平和」「心と体と平和」についてのメッセージを3日間担当させていただきます。その2日目です。

このメッセージ・リレーは、広島市西区の太光寺の副住職である東和空さんの発案で、天城流湯治法杉本錬堂さんから始まったのだそうです。バトンはメッセージを書いた方から次のお二人の方に託されます。こうしてメッセージを発信する方がどんどん増えてゆくという仕掛けです。今、いったいどのくらいの方がこのメッセージを発信し、どのくらいの方が受けとってださっているのでしょうか? それを想像すると本当にドキドキします。

今日は私が好きな、ある病院のことから始めたいと思います。
好きな病院……自分で書いてみて「ちょっとヘン!」と笑いました。
でも最近こんな感じに触れたのは久しぶり!と思うような素敵な感覚だったので、ここでご紹介させていただきます。

私は子供のころから少しばかり病弱な性質でした。幼稚園、小学生の頃など、かかりつけのお医者さんに一週間も顔を出さないと「おや、あっこちゃん、どうしてたね?」と先生から訊ねられるほどの常連さんだったようです。

そんな地味~に豊富な私の通院歴。
その中でも、最近ちょっと感動的な病院に出会いました。

その病院は私の家から電車で数駅のところにある、あまり大きくないローカルな総合病院です。駅のそばという立地もあり、周囲には背の高いビルがかなり建っているので、入院病棟もあるほどのしっかりしたビルなのに、うっかりすると通り過ぎてしまいそうになるほどの控えめな佇まいです。

自動ドアで、小ぢんまりとしたエントランスを入ると、そこに広がるのは昭和の風景です。
二階に通じる階段の手すりは木製。
診察室の入口の引き戸も、通風窓の枠もサッシも木製。
ちょうど私が子供だった頃の校舎の内装のような、懐かしさあふれる雰囲気です。
もちろんレントゲンだってCTだってちゃんと備えていますから、病院としての機能は全くレトロではありません。念のため……。
ですが、本当にどこか懐かしいような、ほっこりとあったかい空気に病棟全体がつつまれているのです。廊下に並べられた、これまたちょっとレトロな木製のベンチに腰かけて順番を待ちながら、この空気はいったいどこからくるのかしら? と考えていました。
ただのレトロ・マジック?

その答えは、診察を終えて、会計の時にはっきりとわかりました。
名前を呼ばれて、窓口の前に立った私に、係りの方は「$$$円になります。で、これが領収証で、こっちが処方箋ね。どこの薬局でも大丈夫ですけど、一番早くて近いのがよかったら、そこの目の前の薬局で出してもらえますよ」…とご近所の顔なじみに声をかけるような自然な口調で接してくれたのです。特ににっこり微笑んでというわけでもないのに、とてもホッとする対応でした。

そう思ってみてみると、この病院ではお医者さんと看護師さん、看護師さん同士の会話も、とても普通で自然。いわゆる「接客のプロ」みたいな対応の人がいないんです。これは意外に今大切なことかもしれないぞと思いながら病院を後にしました。

最近は「病院はサービス業です」という発想も広がっているそうで、ちょっと大きな総合病院になると、医療事務は業者に委託していて、受付対応のプロが、例えばこんな感じの制服に身を包んで、まさに鮮やかに流れるように処理してくれます。

接客マナーや、クレーム対応の方法も心得ていて、どの窓口に立っても同じクオリティの対応が受けられます。

ですが、ふとした瞬間に「私、なんだか流れ作業の一部にされている」「私、今相手をしてもらってない」という妙な違和感と言うか、孤独感と言うか、独特の気持ち悪さを感じてしまうことがあるのです。みなさんとても手堅く、微笑みをたたえて、何かあれば腰を低くしてサービス精神を見せてくださいますが、そこに堅くて頑丈な「受付嬢」という名の「お面」や「鎧」を見ているように感じるのです。それは、すべての来院者に平等に、もれなく必要な(でも最小限の?)情報を伝え、会計や処方箋の受け渡しなど、必要なことを手際よく行うための工夫を重ねた結果だとは分かるのですが、どうも何だかそこには人間の体温がない……そんな気がしてきてしまうのです。

こうした違和感を感じる場面は、病院だけではありません。
ファーストフードの店員さんの対応にも同じことが言えると思います。彼らは研修の時点で、様々なことを習うそうです。たとえば「笑顔を作るには、奥歯を少し噛みしめて口角を引いて」とか「声は高めに、テンポよくはきはきとしゃべって明るい印象に」とか……。そして有名な販促トークの数々を仕込まれて店頭に出ます。



店員「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ~」
客「えっと、ハンバーガーを10個と、フライドチキンを20ピース、あとコーラを8個 コーヒー、アイスで4つね」
店員「こちらでお召し上がりですか?」
客「…? んなわけないだろ!? 持って帰るよ!」
店員「エコ包装にご協力ください、手提げ袋は必要ですか?」
客「入れなきゃ俺一人でどうやって持ってくのよ!?」

なんていうコントがありましたが、こんなネタが出てくる背景にも、店員さんのやり取りがマニュアルをなぞるだけになっていて、相手をちゃんと見ない、聞いていないリアクションを体験した方がたくさんいたからですよね、きっと。(笑)

人と人とが向き合う場面にマニュアルという名の仮面を用意する。
そうすることでいちいち考えなくても安心して必要なことだけに、必要な対応をすることを容易にするシステム。
これには経済的な効果はあるかもしれませんが、人と人との関係は逆に希薄にします。
希薄というのでは言葉が足りないかもしれません。人を人扱いしない、コミュニケーションとは呼び難い関係を登場させているのかもしれません。

また、最近の若い方たちの日常会話にも似たような現象を感じることがあります。

少女A「きのうさあ、@@@@で***なことがあってさあ!」
少女B「なにそれ、超うけるんですけど」
少女A「でしょ! もううけるっきゃないって感じ」
少女B「もう、まじうけ!」

少年C「俺がさあ、####しようとしたらさあ、Dの奴%%%しやがってもう超ムカつく」
少年E「ありえねえ! %%%マジかって感じジャン」
少年C「マジありえねえ!」
少年E「Dの奴 かなりヤバくねえ?」
少年C「ヤバい! もうめっちゃヤバイ!」

どちらも相手のコメントに同感、共感しているように見えますが、そこから相手の話題に入っていく気配を感じません。はたで小耳にはさんだ私の方が、耳をダンボにして「それで? なんでそうなったの? そっからどうなったの?」と聞きたくなるのですが、あまりその先には触れずに会話は続きます。また「うける」とか「ムカつく」というような言葉が単なる記号、サインになっていて、なににどう「うける」のか「ヤバい」のか「ムカつく」のかには全く触れずに通じ合った気分になっているようにも見えるのです。

上の会話をエッセンスだけにすると、どちらもさしずめこんな感じです。

Ⅰ「こんなことがあってこんなきもちなんだけど わかってくれる?」
Ⅱ「Yes」
Ⅰ「Yes !」
Ⅱ「Yes !」
Ⅰ「Yes !!」
Ⅱ「Yes !!」

このスパイラルに入り込むと、もう「Yes !」以外のことをさしはさむのは憚られるようなムードが簡単に出来上がりそうです。

さらに最近流行りのスタンプにも同じような効果があると思います。
「このスタンプがつているならこう感じている」というお約束の印。
とても端的に気分を伝えることができるという便利さがある反面、本当に本人がその時何を感じているかには全く触れずに会話の波に乗ることができるという、ある意味恐ろしい側面も持っていると思います。

「クォータースターコンテスト」という、ネット上で15分ノーカットの演劇動画を競うイベントで、昨年(第3回)のグランプリを受賞したのが、まさにそんなポイントを衝いたてもユニークな作品でした。
週刊パラドックスというグループの「会話劇2014」です。
ご覧ください。



マニュアル対応、お決まり、お約束の反応を迫られる関係、これはとても苦しいと私は思います。その胸の内の苦しみが積もり積もった挙句に何が起こるか? 自分自信でもその苦しみの始まりがどこだったのか、それすらわからなくなるようなところまで行ってしまった末に、何かの事件や病気に発展する可能性もありはしないでしょうか?
そんなあたりが現代の日本にある(もしかしたら世界にかもしれません)、人の心とコミュニケーションの課題かもしれません。

人はいつでも私とは違うところを見、私とは違うことを感じている。
そのことをもっと大切にする目と心を持ちたい……

私にバトンを回してくださったオーハシヨースケさんの言葉をちょっとお借りすれば、同じ方を向いて、並んで同じものを見られるような「親友の立ち位置」に辿り着けることは、とても幸せなことなのだと思います。

そうなれるまでの試行錯誤……それを恐れないコミュニケーションに立ち向かう力が、今求められているのかもしれません。
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例示がすばらしい

青柳さんの、エッセイ&理論の例示がすばらしい!
1日目の合衆国国歌と 日本国歌の例。
2日目の若者会話とスタンプ、そして会話劇映像、
クオリティ高い! 青柳さんのレッスンを受けている感じです!分かりやすく楽しいレッスンありがとう。
  • Yosuke さん |
  • 2015/06/24 (15:26) |
  • Edit |
  • 返信

Re:例示がすばらしい

Yosuke さん
感動的なコメントをありがとうございます!(涙)
世界中の方の目に触れる可能性があるネットの世界に、自分の裸の意見をそのまま書くのには勇気がいるのですが、今回はバトンの意味と、ヨースケさんからバトンをいただいたということに背中を押してもらって、いつもよりぐっと覚悟の必要な内容に挑戦できたと思っています。
とてもステキなチャンスをいただいてありがとうございました。
  • from あおさん |
  • 2015/07/03 (11:43)
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