あおさんのブログ
こんにちは テアトル・エコーの青柳敦子です。「ぐるっぽ・ちょいす」というユニットで、舞台作品を作ります。ワークショップも開催します。人と人とのふれあいと、笑いを求めて今日も行く!! 一匹狼の演出家です。
- 2024/11/22 (Fri)
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- 2013/12/24 (Tue)
気仙沼のカキとアマゾンのピンク・イルカ
素晴らしい舞台を拝見しました。
上演時間は1時間足らず。
演技の専門的なトレーニングを受けた経験も、演出的な技術も持たない学生さんたちの作品に揺さぶられました。
そして深く心に「なにか」が残りました。
「感動」という言葉がぴったりの舞台でした。
その作品が上演されたのは、去る12月15日の日曜日。
上智大学の「語劇際」という催しの中の1本でした。
←こちらが語劇際のポスターです!
「語劇」とは、外国語を勉強している学生さんが、その専攻言語でお芝居を上演するというもので、学問としての語学から、コミュニケーションのツール、表現・伝達の手段としての言語へと橋渡しをするとても貴重なチャンスになっているそうです。
参加していたのは外国語学部からロシア語学科、イスパニア語(スペイン語)学科、ポルトガル語学科の三つの学科のみなさん。
私は、年に1回だけですが、皆さんの劇作のお手伝いになる事を目的にした演技ワークショップをやらせていただいています。ワークショップでは、皆さんから寄せられる課題や目標とにらめっこしながら内容を構成し、毎年楽しく充実したひと時を共有させていただいています。
今年の本番は、ロシア語学科の途中まで、イスパニア語学科は拝見することもできなかったのが、とても残念でした。でも構内でお会いしたみなさんの気合の入った紅潮した面持ちから、きっと素敵な舞台だったのだろうなあと、うれしく楽しい想像をふくらませています。
さて、唯一拝見できたポルトガル学科の作品が、とても とても素敵なものでした。
爽やかな感動と深い感銘を受けました。
タイトルは「未完成な世界」
彼らのオリジナルの脚本による上演です。
ポルトガル学科の語劇の大きな特徴は、毎年学生さんの手によるオリジナル作品を上演するという点にあります。その時に自分たちが興味を持っていること、問題意識を持っていることを戯曲に書きあげ、ポルトガル語に翻訳して上演するという手間のかかる作業をしていらっしゃいます。
今年の作品は、仙台で牡蠣の養殖をしていらっしゃる畠山重篤さんの絵本「カキじいさんとしげぼう」をブラジルの物語に置き換えたものでした。
← こちらがその絵本です
オリジナルの物語は、気仙沼に長く住んでいる”カキじいさん”と”しげぼう”のお話。
カキが育つ海が守られるためには山も元気じゃなきゃいけない。自然と私たちの繋がりをやさしく物語っているそうです。
ポルトガル語劇団ではそれをアマゾンの熱帯雨林にすむ伝説のピンク・イルカと都会の少年、そして今も密林の中で独自の暮らしを守っている先住民族ヤノマミの少女、というとても個性的な登場人物たちに置き換えました。
森林の声を聞きながら暮らすヤノマミの人たち…
森林を開発し、工場を建て、製品を世に送り出すことで生計を立てている少年の父…
その恩恵を受けて生活している都会の少年…
森林の変化と人々の生活の変容を見つめ続けてきたピンク・イルカ…
物語は自然保護が善、環境破壊が悪、というようなシンプルな構造にはなっていません。
でも、どこかで何かを変えなければ、このままではいけない、という静かなメッセージがしっかり折り込まれていました。
そして彼らが選んだタイトルが…「未完成の世界」でした。
世界はいつでも何かしら足りないもの、変わっていかなければいけないものを含んでいる。
決して完成した物にはならないのだと。
今、たった今の日本でこの作品を取り上げ、上演なさったポルトガル語劇団の皆さんのアンテナに心から拍手を送りたいと思います。
震災復興、原発の問題、国政や都政の迷走…そんなものがオーバーラップせずにはいられませんでした。
そして知らずに涙が流れました。
会場には絵本をお書きになった畠山重篤さんがいらしていて、終演後に短いスピーチをしてくださいました。
そこで、畠山さんが「海を守るために山に植林をする」という活動を続けていらしたこと、その活動が評価されて、国連森林フォーラム(UNFF)から2012年の「フォレストヒーローズ」に選出されていらしたことを知りました。
技術ではない、芸術性でもないもの……もっともっと根源的な人と人とのふれあいに手を届かせるもの……
それがダイレクトに人を動かすという、表現の原初的な力強さを体験をさせていただいたと思っています。
アマチュアさん 斯くありなん!!
演劇の一番の強みは、技術・技量ではなく、みなさんの人間力で人を驚かしたり喜ばせたりできるということですよ!!
頑張れ~!!!
上智語劇祭の皆さん、担当の先生方、本当に素敵な体験をありがとうございました。
Comments
無題
Re:無題
私は幸せな現場に立ち会った一観客です。